前回の<マッターホルン登山の難易度は?登頂に必要な体力・技術はどのくらい?>に引き続き、今回はその具体的なトレーニング方法についてお伝えします。
私は2018年の4月にソロでマッターホルンを登っていますので、主にその時の経験を元に書いていきますが、【ガイド付き登山の場合】【数名のパーティーを組んだ場合】にも、こんなトレーニング(山行)が効果的だろうと思われるものを紹介します。
一度観光ついでに軽い気持ちで挑戦したらみごとに敗退して、日本でトレーニングを積んで再度挑みました。
※登山は天候やその他の条件で難易度がかなり変わりますし、あくまで私なりの考えですので、本記事で紹介したトレーニングをこなせば絶対にマッターホルンも登れるという保証になるわけではありません。
ガイド付き登山でマッターホルン登頂を目指す場合
体力トレーニング
長い登りの続く【早月尾根】【笠新道】【常念岳】あたりがトレーニングに向いていると思います。
その際、1時間当たりに稼げる標高を常に意識して登ると良いでしょう。
何故なら【ヘルンリヒュッテ(hornlihutte)3,260m】から【マッターホルン山頂4,478m】までは、標高差が1,218mあります。
ガイド付き登山の場合は、4時間以内に山頂にたどり着けなければ下山を開始すると言われています。
そうなると、最低でも1時間あたり300m以上の標高を稼げるペースで、4時間以上登り続けられる体力が必要になってきます。
ガイド付き登山では、ソルベイヒュッテ(Solvayhutte)で5分程度、山頂でも10分から20分程度しか休憩が取れないと聞きました。
ほとんど休憩を取らずに8時間以上動き続けられる体力を目指しましょう。
岩登りトレーニング
まだ一度もクライミングをしたことが無い人は、室内のクライミングでも良いので、最低でも10回程度は登っておきたいところです。
特にマッターホルン後半の太い固定ロープが続くエリアでは、クライミングを経験しているかどうかで、腕にかかる負担が大きく変わってきます。
腕の力に頼らずに、しっかりと足で登ることに慣れておきたいですね。
それ以外にも、剱岳や穂高周辺(特に大キレット)、後立山の八峰キレットや不帰ノ嶮あたりで岩場の登下降に慣れておくとさらに良いです。
アイゼントレーニング
完全に雪に覆われた状態の山よりも、岩が見え隠れするような状態でのアイゼン歩行(登下降)トレーニングが効果的です。
出来れば岩登りのトレーニングでもおすすめした辺りに行ければ良いですが、ガイド付き登山ならそこまで険しくなくても大丈夫です。
前爪にうまく体重を乗せて岩を登れるようになれば、多少残雪があっても登頂の可能性はかなり高まります。
4本や6本の軽アイゼンではなく、最低でも10本爪以上のアイゼンが必須です。
高度順応
私自身、高度には弱い体質なので、高度順応にはしっかりと時間を割きたかったのですが、実は登頂出来た時も高度順応するための日数が取れずに、そのせいでかなり苦しみました。
出来れば日本にいるうちに一度は富士山に登っておきたいところです。
ガイド付き登山の場合は、事前にブライトホルンなどでテストがあるので、そこでも高度順応が出来ます。
もしその時点でひどい頭痛がしたり、眩暈がするようならば、アタック当日までに少し日数を取って高度慣れできるように計画しましょう。
高度に対する適応力は人それぞれ。
高山病でへろへろになってしまっては本来の力が発揮できなくなります。
数名のパーティーを組んだ場合
最低限【ガイド付き登山の場合】のレベルは満たしているものとして、さらに必要になってくる部分について書いていきます。
体力トレーニング
【ガイド付き登山の場合】より、ロープその他必要になってくる装備が増えて重くなりますし、道を間違えて登り返すこともあるので、より十分な体力をつけておきたいです。
【ガイド付き登山の場合】で紹介したような山を、ロープやその他の装備を積んだ重量のザックで登って、どれくらいのペースで歩けるか確認しておきましょう。
もちろん非常食や万が一のビバーク等の装備も必須です。
岩登りトレーニング
岩登りそのものの技術は元より、ロープワークの正確さ、スピーディーさも求められます。
せっかく登る技術があっても、ロープ操作にもたつくと時間がどんどん過ぎていってしまいます。
それほど難しいルートではなくても良いので、マルチピッチのクライミングをトレーニングに組み込むと良いでしょう。
【小川山】や【瑞牆山】などには多くのマルチピッチルートがあります。
同時登攀になる機会も多いと思うので、その場合のロープワークも身につけておきたいですね。
ルートファインディング
ガイド無しで登る場合に、おそらく一番重要になってくるのが、ルートファインディングの技術です。
私は事前に登頂した人のブログや写真を何度も眺めて、自分の中ではかなり自信をもって挑んだつもりでしたが、それでも実際に登りだしてみると、それらの事前準備は全くと言っていいほど役に立ちませんでした。
ルート選びに慎重になるのはもちろんですが、それでもおそらく迷うことは避けられないでしょう。
もはや一度や二度の道間違いは起きてしまう前提で、いかに早く間違いに気が付いて、そこからどうやって正しい道に戻れるかの方が重要になってくるかと思います。
日本の一般的な登山ルートは目印がたくさんついているので、それ以外のバリエーションルート【剱岳北方稜線】【槍ヶ岳北鎌尾根】【前穂高北尾根】などをいくつもこなすうちに「あれ?この道なんかおかしいぞ?」という間違いにすぐに気が付く能力が養われます。
ソロの場合
ソロの場合も、最低限上記のふたつの場合におけるレベルは満たしているものとして、さらに必要になってくる部分について書いていきます。
ソロで挑戦する場合には、なんといっても【ミスをしないこと】が一番重要になってきます。
マッターホルン登山は長時間にわたり集中を強いられる山行になります。
たった一回のミスがまさに命とりになりかねません。
最後の最後まで気を抜かないようにしましょう。
それと、これは日本でもソロの登山者でよく見かける行為なのですが、コミュニケーションとしてではなく、ルート選びに自信が持てないがために、先行者の後をついていこうとする行為は、とても迷惑ですし、危険な行為なので絶対に止めましょう。
特にマッターホルンのような険しい山では、ただ先行者の後をついていっただけでは、もし先行者を見失ったら、そこから前にも後ろにも動けなくなってしまいます。
今までの山行歴とマッターホルンのために行ったトレーニング(山行)
最後に、ソロで登る場合の参考として、私の山行歴とマッターホルンのために改めて組んだトレーニング(山行)を載せておくので、もしソロでマッターホルンに登ることを考えている方は参考にしてみてください。
自身の体感的には、岩登りのレベルは赤岳主稜がかなりマッターホルンに近いように思いました。
私も出発までの日数に余裕がなかったり、ツェルマットでの天候の関係もあったりで、事前に組んでいたトレーニングがすべてこなせたわけではありません。
特に高度順応が出来なかったのは大きな誤算で、そのせいでスピードも上がらずかなり苦しみました。
それでも、ここまでやっていたから、技術面での不安は一切ありませんでしたし、時間がかかりつつもなんとか登りきれました。
私は仕事の関係上GW頃の残雪期に挑戦となりましたが、真夏でも積雪がある可能性は十分にあります。
たとえガイド付き登山でも、夏山しか登ったことが無い人がマッターホルンに挑戦するのは無謀です。
マッターホルン登頂に向けたトレーニング方法まとめ
今回はマッターホルン登頂に向けた具体的なトレーニング法を【ガイド付き登山の場合】【数名のパーティーを組んだ場合】【ソロの場合】に分けて紹介しました。
マッターホルンは気軽に挑戦できるような山ではありませんが、しっかりとトレーニングをしておけば、一般の登山愛好家でも決して無謀な山ではありません。
最後の最後は好天を引き当てる「運」も大事ですが、やれるだけのことをやって「絶対に登ってやる!」という強い意志で、ぜひともマッターホルン登頂を果たしてもらいたいです。
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